本ページでは、旅先で地震・洪水・山火事・噴火などの災害に遭ったとき、最初の数時間に何をするか、どこから情報を取るか、誰に何を頼めるか、旅程の組み替えと費用がどう扱われるかを、行動の順にまとめている。
発生直後の数時間
最初にすることは身の安全の確保で、情報収集はその後でよい。揺れや火災のさなかは建物の指示に従い、屋外では海岸・川筋・斜面から離れる。津波警報が出た地域では高台へ移動し、解除まで戻らない。ホテル滞在中ならフロントの誘導が最も早く、避難場所と集合場所を把握している。
安全が確保できたら、家族か同行者に無事を短く伝える。音声通話が繋がりにくいときも、メッセージアプリや SNS の投稿は届きやすい。端末の電池は情報源そのものになるため、画面の明るさを落とし、モバイルバッテリーを温存する。
たびレジに登録していれば、滞在先の大使館・総領事館から緊急一斉通報が届き、必要に応じて外務省や公館が登録した連絡先へ安否を確認してくる。登録は出発前の数分で済み、旅行中に日程が変わっても更新できる。
情報の取り方
優先順位は、現地当局の公式発表、日本の在外公館の領事メールと公館サイト、外務省海外安全ホームページの順である。現地当局は避難指示・道路と空港の閉鎖・ライフラインの復旧見込みを最も早く出す。公館は邦人向けの安否確認窓口と、日本語での状況整理を担う。
外務省海外安全ホームページには、大規模災害の発生時に速報として出るスポット情報と、国・地域ごとの4段階の危険情報がある。レベル3は渡航中止勧告、レベル4は退避勧告で、後述の旅行変更費用の特約や旅行会社の判断はこのレベルを参照することが多い。
当サイトの災害記事は、発生から1〜2日で現地当局の一次情報を日本語に整理したもので、速報ではない。記事の出典欄にある当局サイトが最新の状態を持っている。
頼る先の役割分担
災害時に頼る先は3つあり、それぞれ役割が違う。大使館・総領事館は安否確認、退避の情報提供と支援、パスポートを失ったときの帰国のための渡航書の発給を担う。治療費や帰国費用の立替、ホテルや航空券の手配は公館の役割の外にある(公館の役割と管轄は海外で日本大使館を頼るときにまとめている)。
お金と医療の相談先は海外旅行保険のアシスタンスデスクである。24時間日本語で応答し、受診先の案内、キャッシュレス提携病院への取り次ぎ、医療搬送や家族の渡航の手配まで扱う。証券番号と直通番号を紙とスマートフォンの両方に控えておくと、この窓口にすぐ辿り着ける。
旅程の相談先は旅行会社と航空会社である。添乗員同行ツアーなら添乗員が現地で判断と手配の窓口になり、パッケージや個人手配なら旅行会社の緊急連絡先と航空会社の予約窓口が入口になる。緊急番号(救急・警察・消防)は海外で体調を崩したらの国別早見表にまとめている。
| 頼る先 | 担うこと | 担わないこと |
|---|---|---|
| 大使館・総領事館 | 安否確認・退避の情報と支援・帰国のための渡航書 | 費用の立替や貸付・宿と航空券の手配 |
| 海外旅行保険のアシスタンスデスク | 受診先案内・キャッシュレス診療・医療搬送・家族の渡航手配 | 旅程の組み替え |
| 旅行会社・添乗員・航空会社 | 旅程の変更・帰路の手配・振替と払戻 | 治療と費用補償 |
旅程の組み替えと帰国
航空会社は、自然災害で運航に影響が見込まれる便について、実際の運航状況にかかわらず手数料なしで予約変更と払戻を受け付ける特別対応を出すのが通例である。対象便と期間は各社サイトの運航案内に告知されるため、欠航が決まる前でも確認できる。
募集型企画旅行(パッケージ・添乗員同行)は標準旅行業約款が扱いを定めている。外務省の危険情報が出ても企画旅行が自動的に中止になるわけではなく、実施の判断は旅行会社が自己の責任で行う。出発前に天災地変で旅行の安全かつ円滑な実施が不可能、またはそのおそれが極めて大きいときは、取消料なしで解除できる。旅行開始後に旅行会社が継続不可能と判断して解除した場合、受けていないサービス分の代金は費用を差し引いて払い戻される。
一方で、旅行開始後の帰路は旅行会社が手配を引き受けるが、出発地に戻るための費用は旅行者の負担になる。旅行会社が講じる保護措置の費用も、会社の責任によらないときは旅行者負担である。ここが保険の出番で、次節の旅行変更費用の特約がこの部分を受ける。
費用と補償
被災で発生する費用は、治療の系統と旅程の系統に分かれる。治療・医療搬送・家族の駆けつけは海外旅行保険の治療費用と救援者費用が受け、海外で起きた地震・噴火・津波が原因でも対象になる。対象外は航空機遅延と手荷物遅延の2特約に限られる。
旅程の系統、すなわち延泊、振替の交通費、旅行の中止に伴う取消料、途中帰国の費用は基本補償ではない。旅行変更費用の特約があれば、旅行先の地震・噴火・津波を事由とする途中帰国の取消料と帰国費用が担保される。外務省の退避勧告を事由に含む商品もある。旅行キャンセル費用の特約は出発前の中止を受けるが、補償は契約の翌日から始まる。
企画旅行には旅行会社の特別補償もある。海外旅行では地震・噴火・津波によるケガも対象で、死亡補償金、入院・通院の見舞金、携行品損害が定額で支払われる。治療費そのものは含まれないため、海外旅行保険の代わりにはならない。
| 費用 | 受ける仕組み | 備考 |
|---|---|---|
| 治療・入院・医療搬送 | 海外旅行保険 治療費用 | 地震・噴火・津波が原因でも対象。カード付帯は上限が小さい |
| 家族の駆けつけ渡航・宿泊 | 海外旅行保険 救援者費用 | 同上 |
| 延泊・振替交通・途中帰国 | 旅行変更費用(特約) | 旅行先の天災が事由(退避勧告を含む商品もある)。特約がなければ自己負担 |
| 出発前の中止の取消料 | 旅行キャンセル費用(特約)/企画旅行は約款で取消料なし | 特約は契約翌日から有効 |
| 航空券の変更・払戻 | 航空会社の特別対応 | 手数料なしが通例。対象便は各社告知 |
| ケガの見舞金・携行品 | 企画旅行の特別補償 | 定額。治療費は含まない |
補償額の考え方と、クレジットカード付帯の保険で足りる場面と足りない場面は海外旅行保険の考え方にまとめている。
出発前の備え
出発前にしておくことは4つで足りる。たびレジへの登録、海外旅行保険の証券番号とアシスタンスデスク直通番号の控え(紙とスマートフォン)、旅行会社と航空会社の緊急連絡先の控え、渡航先の危険情報とスポット情報の確認である。持ち物と手続きの全体は出発前の準備チェックシートに一覧がある。
現地では、到着日にホテルの避難経路と集合場所を確かめ、モバイルバッテリーを常に携行する。滞在中に危険情報のレベルが変わったときは、旅行会社と保険会社の両方に連絡して、旅程の扱いと補償の適用を同時に確かめる。
参考情報
- 外務省 海外安全ホームページ「たびレジ」(海外安全情報配信サービス) — https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/
- 外務省 海外安全ホームページ「危険情報とは」/スポット情報 — https://www.anzen.mofa.go.jp/masters/risk.html
- 政府広報オンライン「出発前に登録を! 海外での安心を届ける“たびレジ”」(2025年12月) — https://www.gov-online.go.jp/article/202512/radio-3335.html
- 観光庁 標準旅行業約款(募集型企画旅行契約の部 第16条・第18条・第20条・第26条・第27条/特別補償規程 第4条・別表) — https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/810001369.pdf
- JAL FAQ「悪天候や自然災害が発生した場合、手数料なしで予約変更や払い戻しができる対象か確認する方法」 — https://faq.jal.co.jp/app/answers/detail/a_id/29674/
- ANA「航空券の取り扱いについて」(運航への影響が見込まれる場合) — https://www.ana.co.jp/asw/ncf_info
- 損保ジャパン off! FAQ「津波や地震、噴火による補償はありますか?」 — https://faq.sompo-japan.jp/off/faq_detail.html?id=50084
- ジェイアイ傷害火災 たびほ「補償内容」/「支払われない場合」 — https://tabiho.jp/cover-ota/index.html / https://tabiho.jp/overseas/popup/home/guide/notpaid.html
- エイチ・エス損保「旅行変更費用」 — https://www.hs-sonpo.co.jp/store/alter.php