タイ中部を流れるチャオプラヤ川の流域では、9月下旬の大雨と上流からの流入を受けて王立灌漑局がチャイナート県のチャオプラヤ堰の放流量を段階的に増やしており、下流のアユタヤ県では堤防の外側の低地を中心に浸水が広がっています。県の9月27日の集計では7郡・約2万世帯が浸水し、死者は1人とされています。世界遺産の古都アユタヤでは、川沿いに立つワット・チャイワッタナーラームなどの寺院が芸術局の防水壁で守られ、歴史公園は開いていますが、9月26日の大雨では涅槃仏で知られるワット・ローカヤスターラームの周囲が冠水し、通常どおり参拝できない状態が報じられました。さらに、アユタヤへの玄関口であるバンコクでは9月24日からの大雨で市内全50区が災害区域とされ、空港は運用を続けているものの、道路の冠水と鉄道の一部運休が続いています。この記事では、何が起きているか、遺跡と交通の現況、滞在中・渡航予定の方の確認先を1本に整理します。一次情報は王立灌漑局、アユタヤ県とタイ内務省防災局、文化省芸術局(アユタヤ歴史公園)の発表が正となります。
何が起きたか

王立灌漑局は、北部からの流入と支流の増水を受け、9月26日午前9時からチャオプラヤ堰の放流量を毎秒1,850立方メートルから1,950立方メートルへ段階的に引き上げました(タイ公共放送Thai PBS・9月26日の報道)。同局は9月27日から29日にかけて上流のナコンサワン県C.2観測点の流量が毎秒1,900〜2,000立方メートルに達するとみて、放流を2,000立方メートル以内に抑える方針を示す一方、状況によっては2,200立方メートルまでの対応も想定しています。堰の下流では、堤防の外側の低地で水位が0.5〜1.5メートル上がると9月21日の時点で警告されていました。
アユタヤ県では、県の9月27日の集計として、セナ、パクハイ、バンバーン、バンサイ、プラナコーンシーアユタヤ、バンパイン、バンパハンの7郡・95区・479村と市街地の20コミュニティ、あわせて20,173世帯が浸水し、死者は1人と報じられています(MGRオンライン・9月27日)。タイ内務省防災局の同日午前6時の全国集計では県内6郡・13,971世帯で「水位は上昇中」とされ、この時点の集計には県内の死者は含まれていません。数値は集計主体と時点によって幅があり、今後の発表で改められる可能性があります。バンバーン郡のワット・チュラマニー周辺では水深が1メートルを超え、住民が舟で移動していると報じられています(The Nation・9月25日)。
同じ時期、バンコクとその周辺では9月24日から27日にかけて一部の地点で330ミリを超える雨が降り、バンコク都は市内全域に災害事態を宣言し、全50区が災害区域とされています。都の集計では約52,000世帯が影響を受け、避難者は9月26日夕方の都の会議の時点で約4,200人・避難所233か所(現地報道)、9月27日の報道では約4,900人とされています(AFP)。隣接するサムットプラーカーン県では、冠水した集落での感電による死者も報じられています(Khaosod English・9月27日)。内務省防災局の9月27日午前6時の集計では、全国25県で174,803世帯・545,022人が影響を受け、死者はサケーオ県5人、チャンタブリー県2人、サラブリー県1人の計8人とされています。タイ政府は9月27日の臨時閣議で、バンコク、ノンタブリー、パトゥムターニー、サムットプラーカーンの4都県について、9月28日と29日を官公庁の特別休日とすることを決めました。
影響が出ている地域・施設・交通

アユタヤ歴史公園(島内の遺跡群)——芸術局アユタヤ歴史公園長は9月27日、川沿いと運河沿いのすべての遺跡で防護を強化しつつ「観光地は通常どおり開いている」と述べています(MGRオンライン)。島内の主要な見どころは開いており、遺跡へ通じる主要道路も9月24日の時点で冠水していません(The Nation)。ただし、9月26日の大雨では島内の複数箇所で雨水がたまり、涅槃仏で知られるワット・ローカヤスターラームでは像の周囲が冠水して通常どおり参拝できない状態が報じられました(Thairath・9月26日)。芸術局と市は排水ポンプで川と運河へ水を逃がしていますが、遺跡ごとに見学できる範囲が変わるため、当日の案内に従ってください。
川沿いの寺院——チャオプラヤ川に面したワット・チャイワッタナーラームでは、芸術局が川岸約165メートルに高さ1.9メートルの組み立て式防水壁138枚を設置し、防水シートと土のうで補強、浸水時の自動ポンプも備えています(The Nation・9月24日)。9月26日にはシートの継ぎ目から水がにじみ出て遺跡の敷地内に入り、職員が24時間態勢で排水にあたっています(Thairath・9月26日)。島の対岸にあるワット・カサットラーティラートでも僧侶と兵士が長さ約120メートル・高さ1.9メートルの防水壁を設け(The Nation・9月24日)、ワット・タンマーラーム、ポルトガル人居留地跡、ポムペット砦などにも防護線が設けられています(MGRオンライン・9月27日)。9月24日の時点ではワット・チャイワッタナーラームは通常どおり見学できると案内されていましたが、水位は上がり続けており、見学の可否は当日の判断になります。
玄関口バンコクの空港と交通——スワンナプーム、ドンムアンの両空港は運用を続けており、欠航が相次ぐ状況にはなっていません(運輸省・9月26日)。ただしスワンナプームでは道路の冠水で地上係員が出勤できず、便の遅延と手荷物の受け取りに長い待ち時間が出たと運営側が説明しています(Khaosod English・9月27日)。ドンムアンでは南側誘導路の一部が冠水しましたが離着陸は通常どおりです。空港への道路ではウィパーワディー・ランシット通り、シーナカリン通り、ラートクラバン方面で冠水が報じられ、高速道路公社と道路局は都内の高速道路8路線とモーターウェイ7号・9号、ドンムアン・トールウェイを9月29日23時59分まで無料にして迂回を促しています。タイ国際航空は、9月26日から29日にスワンナプーム発の便を利用する乗客について、同一路線・同一運賃クラスであれば旅行日の変更手数料を1回に限り免除しています。
鉄道——タイ国鉄は9月26日、ナコンサワン県内のノーンポー〜ヌーンマコーク間で線路がレール面上約15センチまで冠水したため区間を閉鎖し、北部方面の長距離列車9本を始発駅から運休、運行中の列車はバーンタクリー〜ナコンサワン間を自動車で代行しました。9月27日午前9時30分からは北本線を通常経路で再開したと案内していますが、東本線を中心に一部の列車で運休や区間短縮が続いています。バンコクからアユタヤへ向かう列車の当日の運行は、タイ国鉄の案内で確認してください。都市鉄道のレッドライン、エアポート・レール・リンク、MRT各線は運行しています。
現地に滞在中の方・ご家族が渡航中の方へ
- 冠水した道路や水たまりには入らないでください。バンコク近郊のサムットプラーカーン県では、冠水した集落での感電による死者が報じられています。電柱や配電盤の近く、ふたの外れた側溝には近づかず、夜間の移動は控えてください
- 遺跡では、水がたまっている場所や立入禁止の表示のある区域に入らないでください。寺院ごとに見学できる範囲が変わるため、アユタヤ歴史公園の案内や入口の係員の指示に従ってください。川沿いの防水壁の周辺では作業が続いています
- 空港へは通常より大幅に余裕をもって向かい、出発前に航空会社の運航情報を確認してください。市内の道路状況はバンコク都の発表と道路交通情報で確認できます
- 緊急番号は警察・救急が191、消防が199、観光警察が1155(日本語・英語可)です。受診の入口や医療費の考え方は海外で体調を崩したら(タイの節)にまとめています
- タイを管轄する在外公館は在タイ日本国大使館(バンコク・ウィッタユ通り177、電話 +66-2-696-3000)です。滞在中の方は、たびレジ(3か月未満)または在留届の登録を済ませておくと、緊急時の情報配信の経路になります。所在地と連絡先は日本大使館・領事館の一覧(タイの節)で確認してください
- ご家族が現地に滞在中の方は、道路の冠水や交通の遅れで連絡が遅れることがあります。宿泊先やツアー会社を通じて安否を確かめてください
- 旅先で災害に遭ったときの行動の順と、大使館・保険・旅行会社の役割分担、旅程の組み替えと費用の扱いは海外で被災したときはにまとめています
これから渡航を予定している方へ
- 出発前と到着時の確認先は、王立灌漑局のチャオプラヤ堰の放流発表、アユタヤ県とタイ内務省防災局の状況報告、芸術局アユタヤ歴史公園の案内、タイ国鉄とタイ空港公社の運行情報です。王立灌漑局は9月27日から29日にかけても上流からの流入が毎秒1,900〜2,000立方メートルに達するとみており(Thai PBS・9月26日)、堤防の外側の低地では浸水が続く見通しです
- ツアーで訪れる場合——川沿いの寺院や涅槃仏を含む行程は差し替えになることがあり、船を使う行程は水位によって変更されることがあります。催行の可否と行程の変更は旅行会社に確認してください
- バンコクでの乗り継ぎ・滞在——9月28日と29日は4都県で官公庁が特別休日となり、銀行や病院、民間企業の対応は機関ごとに異なります。空港と市内の移動には通常より大幅に時間の余裕を見込んでください
- あわせて外務省海外安全ホームページのタイのページと在タイ日本国大使館の安全情報を確認し、渡航前にたびレジへ登録しておくと安心です
参考情報
- เขื่อนเจ้าพระยา เพิ่มการระบายน้ำจาก 1,850 เป็น 1,950 ลบ.ม./วินาที(Thai PBS・2026年9月26日・王立灌漑局の放流増)
- กรมชลฯ จับตาน้ำเจ้าพระยา เพิ่มการระบายน้ำ หวั่นน้ำเหนือเพิ่ม 27–29 ก.ย.(Thai PBS・2026年9月26日・27〜29日の流入見通し)
- Thailand warns on Sept 21 of 0.5–1.5m water rise below Chao Phraya Dam(The Nation・2026年9月21日)
- Monks and troops protect Ayutthaya temples as Chao Phraya rises(The Nation・2026年9月24日・防水壁と開場状況)
- ฝนถล่มอยุธยา พระนอน 600 ปีแช่น้ำ วัดไชยวัฒนารามน้ำทะลุแนวกั้น(Thairath・2026年9月26日・涅槃仏周囲の冠水)
- อยุธยาน้ำท่วม 2 หมื่นครัวเรือน เสียชีวิต 1 ราย เร่งป้องกันโบราณสถาน นักท่องเที่ยวยังเที่ยวได้ปกติ(MGRオンライン・2026年9月27日・県の集計と歴史公園長の発言)
- Ayutthaya residents appeal to Anutin as floodwaters rise again(The Nation・2026年9月25日・バンバーン郡の浸水)
- รายงานสรุปสถานการณ์น้ำท่วม 25 จังหวัด กระทบกว่า 1.74 แสนครัวเรือน(タイ政府広報局・内務省防災局の2026年9月27日6時集計)
- DDPM reports floods in 25 provinces and Bangkok on Sept 27(The Nation・2026年9月27日)
- タイ首都バンコク洪水、5万世帯超に被害 4900人近く避難(AFP・2026年9月27日)
- バンコク洪水、避難者4,200人に 避難所233か所、約5万2,000世帯に影響(タイランドハイパーリンクス・2026年9月27日・都の9月26日夕方の会議)
- One dead, one unconscious after electric shock in flooded Samut Prakan village(Khaosod English・2026年9月27日)
- Bangkok airports remain open as Transport Ministry sets up flood war room(The Nation・2026年9月26日)
- Suvarnabhumi explains flight delays, baggage backlog amid floods(Khaosod English・2026年9月27日)
- バンコク洪水、2空港は運用継続 鉄道は一部再開も道路や列車に影響続く(タイランドハイパーリンクス・2026年9月27日)
- タイ国鉄、洪水で北部線9列車を運休 東部線も一部区間を閉鎖(タイランドハイパーリンクス・2026年9月27日)
- バンコクなど4都県、洪水で9月28・29日を特別休日に タイ閣議が決定(タイランドハイパーリンクス・2026年9月27日)
- バンコク洪水、高速道路・モーターウェイなど無料措置を9月29日まで延長(タイランドハイパーリンクス・2026年9月28日)
- タイ国際航空、バンコク洪水で航空券の変更手数料を免除 9月29日まで(タイランドハイパーリンクス・2026年9月27日)
- อุทยานประวัติศาสตร์พระนครศรีอยุธยา(文化省芸術局アユタヤ歴史公園・当日の案内)
- 外務省 海外安全ホームページ タイ
- たびレジ(外務省・海外旅行登録)
- 在タイ日本国大使館